かろうじて空いていた角の二人掛け席に腰を下ろしてから、まだ数分も経っていない。すでに宝瑠の目の前には、アイスコーヒーが置かれている。小野寺も同様だった。
【昨日の件について改めて話をさせてほしい】。午前中のうちに、そう小野寺のパソコンにメールを送った。昼休憩の時間帯に話し合う約束を取り付けたのだ。
人に聞かれては困る内容なので、社内を避け、外で話せないかと頼んだ。その結果、以前日葵と入った喫茶店がちょうどいいという話になった。
宝瑠は水滴の伝うグラスを指先でなぞりながら、視線を落とした。まずなにから話そうか、頭の中で情報を整理していた。
他のテーブルはにぎやかだが、この一角だけが妙に静かだった。宝瑠は意を決して、「あのね」と話を切り出した。
「まずは昨日のこと、謝らせて? 小野寺くんの言った通り……私、根回しした。事情があったとはいえ、小野寺くんの気持ちも考えずに、Akiとの契約が偶然取れたように装った。本当にごめんなさい」
頭を下げた宝瑠を見て、小野寺が小さく息をつく。「いいよ」と小野寺は言った。その声は、どこか苦笑まじりで、やっぱり優しかった。
「四ノ宮がさ……俺が困ってるの放っておけなくて動いてくれたんだっていうのはわかるから」
宝瑠は顔を上げ、小野寺を見つめた。彼が気まずそうに、こめかみのあたりを指先で掻いた。
【昨日の件について改めて話をさせてほしい】。午前中のうちに、そう小野寺のパソコンにメールを送った。昼休憩の時間帯に話し合う約束を取り付けたのだ。
人に聞かれては困る内容なので、社内を避け、外で話せないかと頼んだ。その結果、以前日葵と入った喫茶店がちょうどいいという話になった。
宝瑠は水滴の伝うグラスを指先でなぞりながら、視線を落とした。まずなにから話そうか、頭の中で情報を整理していた。
他のテーブルはにぎやかだが、この一角だけが妙に静かだった。宝瑠は意を決して、「あのね」と話を切り出した。
「まずは昨日のこと、謝らせて? 小野寺くんの言った通り……私、根回しした。事情があったとはいえ、小野寺くんの気持ちも考えずに、Akiとの契約が偶然取れたように装った。本当にごめんなさい」
頭を下げた宝瑠を見て、小野寺が小さく息をつく。「いいよ」と小野寺は言った。その声は、どこか苦笑まじりで、やっぱり優しかった。
「四ノ宮がさ……俺が困ってるの放っておけなくて動いてくれたんだっていうのはわかるから」
宝瑠は顔を上げ、小野寺を見つめた。彼が気まずそうに、こめかみのあたりを指先で掻いた。



