Akiはペンを取り、乱雑だが慣れた手つきで自分の名前を記入した。書き終えると、書類を音も立てずに小野寺の手元へと滑らせた。
宝瑠も続いて、担当者としての確認欄に目を通して記入し、押印を終えた。
「これで正式に締結となります。Akiさん、今後ともよろしくお願いします」
小野寺の声が少し安堵を帯びたものになる。その一言を合図にするように、Akiが唐突に声を発した。
「ところで、いつになったらライン見るの?」
え?
会議室に時間差で音が止まった。
小野寺がきょとんとし、Akiの視線の先にいる宝瑠を眺めた。宝瑠はペンを握ったまま、Akiを見つめ、固まっていた。
「今日何時に帰ってくんの? それによっては晩飯の時間もズレるんだけど?」
「っちょ」
一瞬で頭の中が真っ白になる。
宝瑠はあからさまに動揺し、隣に座る小野寺に目を向けた。小野寺は怪訝な目でAkiと宝瑠を交互に見ている。
「……ええと、お知り合い、でしたか? うちの四ノ宮と」
小野寺が困惑の声を上げるが、Akiは意に介さない。契約書を鞄に収めると、それと入れ違いに小さなランチバックを取り出した。スッと宝瑠の手前に置く。
「昼飯。せっかくだから作ってきた。ちゃんと食えよ?」
自分のペースで言いたいことだけを言うと、Akiは立ち上がり、振り返りもせずに会議室を出て行った。
宝瑠も続いて、担当者としての確認欄に目を通して記入し、押印を終えた。
「これで正式に締結となります。Akiさん、今後ともよろしくお願いします」
小野寺の声が少し安堵を帯びたものになる。その一言を合図にするように、Akiが唐突に声を発した。
「ところで、いつになったらライン見るの?」
え?
会議室に時間差で音が止まった。
小野寺がきょとんとし、Akiの視線の先にいる宝瑠を眺めた。宝瑠はペンを握ったまま、Akiを見つめ、固まっていた。
「今日何時に帰ってくんの? それによっては晩飯の時間もズレるんだけど?」
「っちょ」
一瞬で頭の中が真っ白になる。
宝瑠はあからさまに動揺し、隣に座る小野寺に目を向けた。小野寺は怪訝な目でAkiと宝瑠を交互に見ている。
「……ええと、お知り合い、でしたか? うちの四ノ宮と」
小野寺が困惑の声を上げるが、Akiは意に介さない。契約書を鞄に収めると、それと入れ違いに小さなランチバックを取り出した。スッと宝瑠の手前に置く。
「昼飯。せっかくだから作ってきた。ちゃんと食えよ?」
自分のペースで言いたいことだけを言うと、Akiは立ち上がり、振り返りもせずに会議室を出て行った。



