「じゅえちゃん、ご飯は?」
「とっくに食べた。パン二つとおにぎりひとつ。それは食べきれなかったぶん。瑠奈が食べてよ」
「あまり物?」
「言い方な」
「……うーん」

 宝瑠がふふっと口元に笑みを浮かべると、瑠奈は少し困った様子で眉を垂れた。

「なによ。おにぎりひとつ分ぐらい、入るでしょ?」

 そう言って、ランチバックと入れ替えに紙パックのジュースを取って口にする。

「太っちゃうよ」
「馬鹿言わないの、そんなガリガリに痩せてるくせに。むしろ瑠奈はもっと食べなきゃだめよ」
「……うーん」

 瑠奈はまたあんパンをかじる。相変わらず、蟻かなにかが食べるようなスピードだ。のろのろと。ゆっくり、静かに咀嚼している。

「わかった。……ありがと、じゅえちゃん」
「うん」

 瑠奈は一旦おにぎりを取り、コンビニ袋の中に仕舞う。

「瑠奈、今日バイトは?」
「今日はないよ。真っ直ぐ帰って、家の手伝いしなくちゃ」
「真面目だねー」
「そうすればお母さん機嫌いいし、お小遣いもらえるから」
「ちゃっかりしてる」
「世渡り上手と言って」
「はいはい」

 宝瑠はランチバックを手に取ると、すくっと立ち上がった。「じゃあ私は先に戻るね」と言って、あんぱんを食べる瑠奈を見る。

「もう? まだ昼休み、二十分もあるよ?」
「生徒会室に寄らなきゃいけないの」
「どっちが真面目?」