頭上には果てのない蒼天が広がっていた。
「あー、じゅえちゃん、もう来てるー」
澄み切った青空を見上げていると、柵を背に座った宝瑠の耳に、どこか間の抜けた声が届いた。
風にさらわれてなびいた髪を手で掻き上げると、二つ下の後輩の坂井瑠奈が、コンビニ袋を手に歩いて来るのが見えた。
宝瑠はブレザーの襟に触れ、「遅いよ、瑠奈」と声をかけた。「ごめんごめん」と悪びれなく笑いながら、瑠奈が隣に腰を下ろした。
昼休みに入ってもう二十分経つのに。まったく、なにをのろのろしてたんだか。宝瑠はマイペースな瑠奈を横目で見やり、小さく息をついた。
高校の屋上には宝瑠と瑠奈のふたりしかいなかった。屋上の鍵がしっかりと施錠されて立ち入り禁止となっているからだが、一部、小さな窓が壊れていて開くようになっている。
体の大きな男子生徒や太っている生徒は、その窓を潜り抜けられないだろうが、宝瑠たちは細身で華奢なため、体を器用にひねって窓から外に出ることができた。
隣で瑠奈が菓子パンの袋を開ける。丸い小さなあんぱんがひとつ。子供みたいに、ちみちみとかじる瑠奈を見て、宝瑠は傍に置いたランチバックを引き寄せた。
「またそれだけ? そんなんじゃお昼、もたないよ」
はい、と続けて、残しておいたコンビニのおにぎりを瑠奈のスカートの上にぽんと載せた。



