*
連休の残り数日を利用して、生活に必要なものを直ちに運び込むことになった。
現在、宝瑠が住んでいるマンション契約はそのままにして、久々津のマンションに必要最低限の荷物だけを運び入れた。ひとりでの作業は厳しかったので、宝瑠は彼の手も借りることにした。
日葵は言うまでもなく喜んでいた。天真爛漫なその笑顔だけが唯一の救いだった。
3LDKの久々津のマンションに、宝瑠の部屋なんてものは、存在しなかった。
当然、寝室は男女で分けさせてもらうのを絶対条件とし、宝瑠は日葵と同じ部屋で寝させてもらうことになった。
そして家事についても詳細に話し合った。宝瑠はできることとできないことを文章化してまとめ、久々津にラインで送った。
掃除についてはそれなりにできる。食後の食器洗いや片付けもできる。洗濯もできる。ただやる気が出ないことを除けば、だいたいのことはできるのだ。
けれど、料理に関しては壊滅的だった。お米はかろうじて炊けるものの、味噌汁すら作ったことがない。
彼は無言で眉を寄せ、「嘘だろ」と怪訝な顔で宝瑠を見つめた。得意料理を『卵かけご飯』と書いたからだ。
彼氏なしの独身女を舐めないでもらいたい。
「設定上、四ノ宮さんは“俺と日葵のことを忘れてる”ってことになってるから。そこんとこよろしくね?」



