母は愛することより、愛されたい人だった。親としての無償の愛には、なにかが足りていなかった。
「ママ、どうしたの? おべんとう、おいしくない?」
「……え?」
日葵に顔を覗き込まれてハッとする。
昔のことを思い出し、それが表情に出ていたのだろう、宝瑠は手を振って否定した。
「そ、そんなことないよ。全部美味しいっ」
「ほんと?」
「うんっ、お父さん、お料理上手だと思う」
ふわっと笑って日葵を見ると、彼女の表情も和らいだ。「そうでしょ?」と言い、にこにこと笑みを咲かせた。
「“ママ”はさ、泣くほど美味いんだとよ、パパのご飯が」
「そっかぁ!」
久々津がいつもの調子で軽口を叩く。
「ちょっ、誰もそんなこと……!」
一瞬で頬が熱くなるけれど、日葵は嬉しそうに父親を見上げて笑っていた。
だいいち、誰がママよ……っ。
宝瑠は目を伏せて、その言葉を飲み込んだ。
日葵にちゃんと訂正しない久々津に、胸がざわついた。
——だけど、なんとなくだが、わかってしまう自分もいた。
ママじゃないと言わないのは、久々津なりの愛情なのかもしれない。これまでずっと信じてきた母親像を、娘から奪いたくない、そう思って否定するのをやめたのかもしれない。
「ママ、どうしたの? おべんとう、おいしくない?」
「……え?」
日葵に顔を覗き込まれてハッとする。
昔のことを思い出し、それが表情に出ていたのだろう、宝瑠は手を振って否定した。
「そ、そんなことないよ。全部美味しいっ」
「ほんと?」
「うんっ、お父さん、お料理上手だと思う」
ふわっと笑って日葵を見ると、彼女の表情も和らいだ。「そうでしょ?」と言い、にこにこと笑みを咲かせた。
「“ママ”はさ、泣くほど美味いんだとよ、パパのご飯が」
「そっかぁ!」
久々津がいつもの調子で軽口を叩く。
「ちょっ、誰もそんなこと……!」
一瞬で頬が熱くなるけれど、日葵は嬉しそうに父親を見上げて笑っていた。
だいいち、誰がママよ……っ。
宝瑠は目を伏せて、その言葉を飲み込んだ。
日葵にちゃんと訂正しない久々津に、胸がざわついた。
——だけど、なんとなくだが、わかってしまう自分もいた。
ママじゃないと言わないのは、久々津なりの愛情なのかもしれない。これまでずっと信じてきた母親像を、娘から奪いたくない、そう思って否定するのをやめたのかもしれない。



