窓の外に立っていたのは腰が曲がった小さな老婆だった。
見たことのない顔だから、この辺の人じゃないんだと思ったね。

きっと徘徊癖があってふらふら歩いて来たんだって。
月明りに照らされた老婆の顔は普通だったよ。

シワに囲まれた目がとても小さくてうつろだったのが印象的だ。

だけどそれだけで、恐怖心は不思議とわいてこなかったんだ。
相手がただの人間だったとわかったからだろうね。

ワタシは安心しきって窓を開けたんだ。
『おばあちゃん大丈夫?』

そう声をかけた。
すると老婆はピタリと歩くのをやめてこちらを見たんだ。
そしてこう聞いてきた。

『私の旦那はどこですか?』