礼儀作法も家事もろくにできない娘で働き口も嫁の行くてもなかったが、屋敷の主人が可哀そうに思って連れてきたのだ。

のんびり屋の主人はこの屋敷内でゆっくり仕事を覚えればいいと言っていたが、もともとの使用人たちはそうはいかなかった。

物覚えの悪い娘をうとましく思い、ひどい扱いを続けていた。
『あんたの寝る場所はないよ』

ようやく1日の仕事を終えて使用人部屋へ戻ったとき、出入り口の前に他の使用人たちが仁王立ちをしていた。

『え、でも』
『仕事ができないお前が、どうして私たちと同じ部屋で寝れると思うんだい?』

そう言われたら返事ができず、娘はうつむいて黙り込んでしまった。