それだけでは終わらず、シンクの中にあった湯呑やコンロの上のヤカンがガタガタと音を立てて、部屋の中を飛び回り始めたのだ。

『な、なんだこりゃあ!!』

たまらず逃げ出そうとしたけれど、足元に落ちていた雑誌がふわりと浮き上がってきて行くてを阻む。

そのうちテーブルや椅子もガタガタと揺れはじめて、壁や天井に向けて飛び回り始めた。
一さんは両手で自分の頭をガードしながら部屋の隅っこに座り込んだ。

何度目を閉じても、何度耳を塞いでも目の前の光景は変わらない。
次第にあるはずのない声まで聞こえてくるようになった。

『あんたのせいよ!』
『なんだと! お前のせいだろうが!』

言い争っている男女の声。