これを聞いてしまうと行方不明になり、二度と戻ってこれなくなる!
拓二さんは耳を塞いだままその場にうずくまり『うわあああ!』と大きな悲鳴を上げてチャイムの音をかき消した。

絶対に聞かない。
これ以上は聞かない。
そんな気持ちで声を張り上げ続けた拓二さんの前に現れたのは、村の祭りで使われる法被う姿の男性だった。

男性は拓二さんから少し離れた場所に立ち、ゆっくりと手招きをしている。

『おいで、おいで』

その人の口は動いていないはずなのに、そんな声が脳裏に聞こえてきた。
拓二さんは必死に首を左右に振ってそれを拒絶した。

ついていったら行けない。
本能的にそう感じていた。