「料亭での食事?」

「はい、今度の日曜日」

目の前にいるのは上司の佐々木さん。
料理の腕はもちろん、スタッフのフォローもこなす、
ばりばりのキャリアウーマンである。

3人の子供を育てながら、
趣味の映画やディ〇ニーに行ったりと、
とにかくアクティブで、
私が仕事を掛け持ちしても、この人には敵わないと
常々思っていて、キャリアウーマンを通り越し
スーパーウーマンでもいいかと思っている。

「先方からの招待なら構わないわよ」

「そうですか」

「嫌なら、私から断っておくけど?」

「いえ、嫌な訳ではないんです」

「それと、お金持ちには、お金持ちのネットワークがあって、
 できるだけご機嫌を取っておきたいの、
 私としては、食事に行ってくれると助かるわ」

「分かりました」

佐々木さんの言葉に、日曜食事に行く事を決意する。

確かに口コミは重要だし、
できるだけ機嫌は取っておきたい。

「せっかくのデートなんだから、おしゃれして、
 メイクも可愛くして行ったらいいわよ」

その言葉に私は過剰に反応する。

「デートですか?」

「あら、若い男女2人、デートでしょう?」

「いえいえ、仕事の延長です!」

「そう、その反応なら安心した、
 絶対好きになって、迫らないでね」

佐々木さんの言葉に胸がズキンと傷む。

あれ?なんで胸が痛いの?

相手が私の事を恋愛相手として対象外に見ている事は、
最初から分かっていたし、そもそも釣り合わない。

そう、好きになっても駄目な人なのに・・・

そんな思いを抱えながらも胸が痛み、
鷹村さんってどんな服が好きだろう?とか
いろいろ考えてしまっていた。