周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

「……き、よ」
「え?」
「私だって、あなたのこと好き、よ」

 唇が重なる直前、エリシアからぽつり、と言葉が発せられる。それを聞いて、ゼインは唖然としてエリシアを見つめた。

「私だって、ずっとずっとあなたのことが好きだった!でも、きっとあなたにとっては迷惑だろうし、こんな気持ちは持っていてはいけないと思ってずっと封印してきたの。なのに、あなたは突然距離が近くなっていつもドキドキして振り回されて、どうしていいかわからなかったのに!それでも、あなたには幸せになってほしくて、だから護衛騎士の任務を解こうと思ったの、に……」

 そう一気に言うエリシアの両目はうるうると潤み、頬も赤く染まっている。

「ほん、とう、ですか……?」

 信じられないと言わんばかりのゼインに、エリシアはうつ向いて小さく頷く。そんなエリシアを見て、ゼインの心臓は大きく跳ね上がり、全身の血が一気に激しく流れ出す。

「エリシア様、俺のことが本当に好きなら、俺を手放すなんて言わないでください。俺のためだなんて、まるっきり逆ですよ。俺はあなたの側にいられるからこそ幸せなのに。騎士としてだって、聖女の護衛が騎士としてどれほど誇らしいことかわかっていない。騎士の中では一番の名誉ある任務なんですよ。ばかな貴族たちがそれを知らないだけだ」

 そう言って、エリシアの片手を掴み、手や腕に小さくキスを落していく。

(うっ、くすぐったい……!それに、ゼインの唇の感触がわかって、はずかしい!)

「ゼイン、く、くすぐったいからやめて」
「だめです。俺を手放さないって約束してくれたらやめますよ」
「わ、わかったから!約束するから」

 エリシアの言葉に、ゼインは満足気な顔でエリシアの手を離す。そして、エリシアを優しく抱きしめた。

「まさか両想いだったとは思いませんでした。嬉しくてどうにかなってしまいそうだ」

 ぎゅううっと嬉しそうに抱きしめてくるゼインに、エリシアは戸惑いを隠せない。

(私だって、まだ信じられない。ゼインが、私を好きでいてくれたなんて……でも、私も嬉しすぎる)

 ゼインの温もりを感じながら、エリシアは嬉しそうにゼインの背中へ手を回した。