「エリシア様、起きてください」

 翌朝。ゼインがそっとベッドの側まで来て、声をかける。だが、いつものようにエリシアは全く起きる気配がなく、心地よさそうに寝息を立てていた。

 ゼインはやれやれという顔をしてから、ベッドへ膝をのせると、ベッドがギシッと鈍い音を立てる。そのままエリシアの顔に自分の顔を近づけて小さく笑うと、エリシアの耳元へ近づく。

「エリシア、起きろ。起きないと襲うぞ」

 エリシアの肩がビクッと揺れると、エリシアの両目が驚いたようにぱっちりと開かれた。アメジストのような瞳がゼインの顔を捕らえると、その瞳はさらに大きく開かれる。

「おはようございます、エリシア様」

 そう言って、ゼインはエリシアの頬に小さくキスを落すと、体を離してベッドの側に綺麗に立つ。

「ゼ、ゼイン!?起きる直前、何か言った!?」

 エリシアはキスされた頬を片手で抑えながら、顔を真っ赤にして尋ねるが、ゼインはにっこりと微笑んで言った。

「さあ?気のせいじゃないですか?ああ、しっかり目はさめたみたいですね。そんなことより」

 そう言って、ゼインは急に真面目な顔になる。

(な、なに?どうしてそんな顔してるの)