周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

「エリシア様、そろそろ起きてください」

 黒髪に長身の一人の騎士が、そっとベッドの脇に立ちベッドの中へ声をかける。ベッドの中からは小さくうめき声が聞こえたかと思うと、ごろん、と寝返りが打たれる。

 そこには、美しい銀色の髪がシーツにキラキラと輝きながら波打ち、白い手足を伸ばしながら可愛らしい寝顔ですーすーと寝息を立てる一人の聖女がいた。

 リネンからはみ出た白い手足はスラリとして美しく、艶めかしい。どう見ても寝相がいいとは言えない状況だが、聖女エリシアの寝姿を見ながら騎士ゼインの若草色の瞳はゆらりと揺れ、ゴクリと喉を鳴らす。そして、そっとベッドに膝をのせるとエリシアの顔の両側に手をつき、そっとエリシアの耳元に顔を近づける。

「……エリシア様。そろそろ起きないと、色々とまずいことになりますよ」

 静かに、低く良い声がエリシアの耳元へ流れ込む。ぴくっとエリシアの肩が揺れて、ゆっくりとエリシアの瞳が開かれる。そして、両目を大きく見開いた。エリシアのアメジスト色の両目には、色気が駄々洩れで妖艶に微笑んでいるゼインが映っている。

「おはようございます。エリシア様」
「……おおおおおおはようござい、ます……」

(びびびびびびびっくりしたああああ!)

 突然耳元になにか良い声が聞こえて目を覚ますと、至近距離にゼインがいるのだからエリシアは驚き、心臓がバクバクと音をたてて鳴り響いている。心臓が今にも口から飛び出てしまうのでは!?と思えるほどだ。

「ようやく起きてくださった。このまま起きないならどうしたものかと考えていましたよ」

 ゆっくりとエリシアから体を離すと、ゼインはポーカーフェイスに戻ってベッドの脇に姿勢よく立つ。

「ど、どうしたものかって?な、なにをどうするつもりだったの?」
「さあ?……知りたいですか?」