「おはようございます」
稜のたんたんとした声が響く。
「おっす!稜」
<実(みのる)>はいつもハイテンションだ。
「...どうしたんですか。良いことでもあったの」
<実>はへへ、と笑って言った。
「お前がいつも落ち着いてるだけだよ」
稜もこれには言葉を返せなかった。
「稜はいつもゴスロリだよな―。」
稜は顔をしかめていった。
「これは上着よ」
<実>も言葉を返す。
「上着だって言ったってゴスロリはゴスロリじゃねーか」
ごもっとも。  



三秒ほど沈黙が襲った。
沈黙を破ったのは稜。


「実、宿題やった?  5小節目から15小節目まで。
歌ってこなきゃいけないんだ」
<実>は首を振って言う。
「やってない。昨日は読書魔に襲われた」
稜は笑う。
「そんなこと言って。   睡魔に襲われたんでしょう?」
こんどは実が絶句。
そして沈黙。



しばらくして稜が言った。

「私たち、今日何かの目撃者になるよ」
<実>は言った。




「何の?」