「は、はぁ…?じ、自分で飲みなさい…っ!」
千晴の行動に動揺を隠せないが、それでも私は千晴に差し出した手を引こうとはしなかった。
「こ、子どもじゃあるまいし、水くらい自分で飲めるでしょう!?」
「いやまだ子どもだし」
「高校生は子どもじゃない!」
「大人でもなくない?」
「そっ、れはそうだけど!」
「ひりひりしてきた…」
「…っ!!!!!!」
眉間にシワを寄せ叫ぶ私に、千晴が無表情だが、どこか堪え難そうに舌を出す。
その姿に私の中の良心が不本意だが傷んだ。
自分で飲まない千晴が絶対悪いのに…っ!
私は悪くないのに…っ!
「し、知らない!」
ここで折れるものか!と千晴のおぼんにダァンッ!と勢いよく水を置いて、視線を逸らす。
それから無視を決め込み、スプーンを手に取った。
「…」
…右隣からずっと視線を感じる。
それでも私は折れることなく、そのスプーンでカレーをすくう。
スプーンに乗ったカレーからは白い湯気が出ており、熱そうだ。
今、まさにそれを口に運ぼうとしたのだが、やはりどうしても右隣の視線が気になり、私の手は止まった。
ああ、もう!
気がつけば私は一旦スプーンを置いて、千晴のおぼんに置いたコップを掴んでいた。



