「あ、ありがとう…。ありがとう、悠里くん」
私は感動のあまり、泣き出しそうになりながらも、オムレツに口をつけた。
ごく普通のオムレツだが、とてもとても美味しく感じる。
きっと悠里くんからの素晴らしすぎるメッセージのおかげだろう。
推しのサービス精神がすごい。
これは間違いなく、出し物部門最優秀賞受賞決定だ。
誰もが投票したくなる出し物だ。
もぐもぐとどんどんオムレツを口に運んでいく私の横にはまだ悠里くんがいる。
推しに見守られながら、食べるのは何だか恥ずかしいが一緒にいられることは嬉しい。
…が、悠里くんは今、仕事中だ。
ずっとここにはいられないだろう。
それなのに何故か悠里くんは私から離れようとしない。
どうしたんだろう、と不思議に思っていると、悠里くんは徐に私の隣の席へと腰を下ろした。
「…?」
突然隣に座った悠里くんに首を捻る。
すると、そんな私の疑問をすぐに感じ取ったのか、悠里くんは遠慮がちに笑った。
「せっかく、来てくれたから少しでも一緒にいたくて…。柚子がいる間だけ、休憩もらったんだよね」
伺うように私の瞳を覗く、綺麗な瞳に、頬を赤らめ、動揺している私が映る。
さすがに可愛すぎて、冷静さを保つことができない。
「…あ、あ、う、嬉しい。私も一緒にいたかったから…」
ついに鬼の風紀委員長である仮面は壊れ、私は消え入りそうな声でそう呟いて、視線を伏せた。
これが今の私の精一杯だ。



