かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

そして相手の意思が明確だと、こちらもサポートに徹することができる。
櫂さんが導入してくれたスケジュール管理アプリは、さっそく大活躍だった。

ノーマンが、カレンダーに日時とやってほしいことを入力するだけで、どしどし用件が片付いてゆく。
なにせ三十人以上が参加しているので、たとえば『⚪︎曜日の午前中にティトの散歩』『引っ越しのために荷物の梱包を手伝ってくれる人』などに都合がつく人が手を挙げればいい。
『その時間は無理だけど、夕方⚪︎時以降なら可能』といったコメントもあり、誰もが積極的だ。

お見舞いにしても、誰かが予約を入れたら、他の人は別の日時にずらせばいいので一目瞭然だった。
予定を入れるとトモミ先生から『新鮮な果物か野菜をお願い』などとコメントが付く。

わたしも何度も、カットフルーツや野菜スティックを携えて病院にお見舞いに行った。

右肘を骨折したために右腕は完全に固定されて使えず、左手も痛めてしまった先生の姿はひどく痛々しい。
最初の数日は両手とも使えなかったので、何一つ自力ではできない状態だったという。

「自分じゃ何もできない。食事もできないし体も洗えないし、トイレさえ行けないの。惨めなものだったわ」

率直に語る瞳には、それでも日に日に力が戻ってきていると感じる。