かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

「両親も兄も、俺の信条におおむね理解を示してくれている。そうはいっても両親は心配なようでね、特に母親はやたらと見合いの話を持ってくるんだ」

はあと、わたしはとりあえずあいづちを打つ。

「相手は皆いわゆる良家の令嬢だ。家柄も育ちも申し分のない。将来俺がビジネスを展開するにも有力なコネクションになるようにと、母親が頑張ってくれているのは分かるんだが。正直ありがた迷惑で」
と顔をしかめてみせる。

「ありがた迷惑…」
いい話に聞こえるのだけど。

「人との繋がりは自分で選び取りたい。政財界に顔のきく家と縁続きになってしまうと、相手の家のことも立てなくてはいけなくなるし、そちらの跡取りになんて事態にでもなったら本末転倒だ」

自尊心が強い人だ。もちろん実力という裏付けがあるんだろうけど。

「最近じゃ父親まで強硬な姿勢になってしまって。身を固めなければ独立は認めない、などと言い出して困っているというわけだ」

「それは困りますね」