かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

櫂さんはそのままコートに大の字にひっくり返った。長い手足を伸ばしたその姿は、なんだか気持ちよさそうだ。

「あーー」と天を仰いで彼がつぶやく。
「…悔しいなあ」

透さんがゆっくりと近づいて手を差し出すと、素直にその手を掴んだ。
よっ、と身体を起こして立ち上がる。

「お前がアウトだと申告したら信じてた」

「それで点を取ったって意味はない。勝負はフェアでないと」

これが紳士というものか。

熱戦を終えた二人に、周囲のコートから拍手が送られる。わたしも控えめにそこに加わった。

コートを後にしながら透さんが櫂さんに語りかける。
「その悔しいという気持ちがあれば、なんであれ真剣になれるさ」

「分かってるよ」

一人っ子のわたしはその光景を見ながら、兄弟っていいなとシンプルに思った。