かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

『あやうく惚れそうです』という台詞を再現するのは恥ずかしかったけど、仕方ない。
透さんは眉根を寄せて顔をしかめ、やああって嘆息する。

「…そんなことを急に言われたから、動揺してしまって」
それでも透さんに話しているうちに、少しずつ気持ちは落ち着いてきた。

「櫂には———やっかいなことに悪気はない。ただ好奇心と探究心だけがある。未知のものに出会ったら通り過ぎることができない。だからあいつは学問と女性が好きだ」
子どもの頃から扇風機に指を突っ込んだとか、急流に足をひたして流されそうになったとか、あげたらキリがないとぶつぶつと続ける。

「危険と分かっていても、やらずにはいられないんだ」

「…わたしは櫂さんにとって、好奇心をそそられる未知の女性、ということ?」

そういうことだと、くちびるを歪めてうなずく。
男としてプライドを傷つけられながらも、兄として弟を理解しているからこそ怒りにも振り切れない。苦々しい表情だった。

「きちんとカタはつける」
大きく息を吐いて言った。わたしの両肩に置かれていた手に力がこもる。