かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

それなのに翌週、櫂さんからの誘いをわたしは結局承諾してしまった。

【木曜日オフなんですけど、お茶でもどうですか?】

いかにも邪気のない誘いだった。
断る理由が見つからないのが泣きどころだ。
忙しい…はずはない。仕事もしておらず、異国でほぼ一人で過ごしているハウスワイフだと、櫂さんも知っている。

そして白状してしまうとシンプルに、わたしは誰かと日本語で話がしたかった。

いちいちこれは英語でなんて言うんだっけと考える日を送っていると、無性に日本語が聞きたくなるときがある。
トモミ先生にばかり精神的に寄りかかるわけにはいかない。夫はひたすら多忙。

寂しいやつだな…と自嘲する。
たとえば透さんの伝手(つて)で、英語力があまり必要ない日系企業の仕事などを紹介してもらうことはできるだろう。
なんとはなしに話題にしたことはあるけれど、互いに消極的だった。

もしわたしが働いたら生活は今以上にすれ違い、家事も外注しないといけなくなるだろう。
そこまでして働くメリットがあるのか———
結局もう少し慣れてから考えようという感じで話が終わり、今に至っている。