かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

翌日、日曜日の朝から透さんは忙しかった。
旧友がニューヨークに来ているので、お互い忙しいスケジュールの合間を縫って午前中の早い時間に会うことになったという。
飲み物だけ口にして出るという透さんに、カフェオレを渡した。

リビングで立ったままカフェオレをすすって、弟はどうだった、と彼が口にした。
櫂さんとオイスターバーで昼食を共にしたことは、昨日のうちにメッセージで伝えてある。
弟はどうだった、とは透さんにしてはずいぶん漠然とした問いかけだ。

「もうニューヨーカーの顔をしてて…」

桜帆は、とこちらに視線を投げてくる。
「櫂をどう思う?」

またも意図のつかめない質問だ。

「弟は———俺から見ても頭の出来はいいし、人の感情を読んだり…悪くいうと操る能力もある。どの道に進んでも成功できるだろうに、やろうとしない。周囲から文句を言われない程度に勉強して、あとは女の子と遊んでいるだけなんだ」

苛立ちの混じる透さんの言葉を聞きながら、背すじににヒヤリと冷たいものを感じる。
わたしまさか操られてない…よね?