かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

ニューヨークで、店員がサーブしてくれるいわゆるレストランだと、テーブルには二人分のカトラリーやナプキンがセットしてある。
お店での食事は二人かそれ以上が基本。
日本よりもずっと “おひとり様” は肩身が狭い社会なのだ。

夫は不在で知人もほとんどいないわたしは、普段はセルフオーダーのカフェやデリで一人でランチを食べている。
透さんと外食をしたのはまだ数えるほどだ。何度か勇気を出して一人でレストランで食事をしたこともあるけど、店内を見回しても一人客が自分だけだとやはり居心地が悪かった。

“お一人だとそうなりますよね”
結婚していてもわたしが “一人” だと、レストランで食事をする機会がほとんどないことを彼は見抜いている。

「グランドセントラルステーションにオイスターバーがあるので、そこどうですか?」
櫂さんが提案してくれた。
「観光客が多いと思いますけど、って僕は観光客みたいなもんですけどね」

「わたしもなんちゃってニューヨーカーなので。そちら行ってみたいです。牡蠣好きです」