かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

部屋に入ると手を洗って買ってきた食材をしまい、花を花瓶に活ける、と一連のことを済ませてからスマホをチェックしたら、透さんからメッセージが届いていた。

【ディナーの予定が急遽キャンセルになった。夕食を頼めるか?】

『もちろん』と打ち、“OK” のスタンプを続けて送った。
彼が自宅で食事をすることはめったにない。だから食べるときはこうして連絡してくれる。
それがぎりぎり過ぎて焦ることもあるけれど。そして文面は毎回そっけないほど端的だ。それでも必ず連絡はくれるのだ。

さて夕飯は何にしようか…

以前透さんにどんな料理が好きか聞いたことがある。

「いわゆる日本のお惣菜かな」
という返事が返ってきた。
日本ほど家庭料理がバラエティに富んでいる国は他にないんじゃないかと、彼は語った。

「和洋中なんでも食べるし、それがいつの間にか日本の食卓に合う料理になっている。家庭料理の代名詞みたいなカレーも、当たり前だけど元はインド料理だ。豚の角煮もルーツは東坡肉(トンポウロウ)っていう中華料理だろう」
様々な国の料理を柔軟に取り入れている日本の食事が、なんだかんだで好きだという。