かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

そうこうしていると、毎日は意外とあっという間に過ぎていった。

ある日の午後、わたしはいつもの散策兼買い出しから帰宅した。
腕に下げたエコバッグにはヨーグルトとパンが詰められている。
プレーンヨーグルトは人気スーパーのプライベートブランドのもの。透さんが珍しく自宅で朝食を摂ったときに「美味い」とつぶやいていたから。
次に食べられるのがいつになるか分からないけど、当分冷蔵庫に入れておくのはこれと決めた。

パンはイタリア系移民が始めた老舗のパン屋でピザトーストを二つ。
これもまあ透さんの口には入らないだろうけど、一応美味しそうなものは二つ買っておく。

もう片方の手にはガーベラの小さな花束。だいぶ花が開いてしまったからと値下げされていたのを手に入れた。
部屋の中に花があると雰囲気が柔らかくなるから不思議だ。

「今日もなかなかの収穫」
とひとりごちながら、アパートに帰りつく。

借りているアパートは赤茶色のレンガ造りの外観だ。築100年は経っているという。
大理石調の白亜の外壁より、こちらのほうが温かみが感じられてわたしは好きだった。
歩道に面して植え込みが作られ、段になるように高さの違う数種類の草木が植えられている。よく手入れされていて通るだけで目を楽しませてくれる。