かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

彼が「形だけの結婚」を提案してきたのも腑に落ちた。
むしろ最初からそう言ってくれただけ誠意があるとさえ思えた。

同じ家に住んでいながら、一日に二言、三言しか交わさないという日もザラにあるのだ。

わたしの一日は朝早く、透さんを「いってらっしゃい」と見送ることから始まる。
それから一人で朝食をとり、家事をこなす。
住んでいるアパートでは依頼すれば、ハウスキーピングのサービスも受けられるそうだけど、わたしは今のところ働いていないので家事は基本的に全部自分でやっている。
掃除、洗濯、花の水換えなどを一通りこなして。

昼食は自宅ですませたり、近所のカフェに食べに行ったりだ。
外出は散歩と買い物を兼ねていることが多い。

住んでいるアッパー・イースト・サイドという地区は閑静な住宅街で、女性でも一人歩きが楽しめる。
セントラルパークに近接しているので、気軽に緑を浴びることもできるのも嬉しいところだ。

この時代なのでたいていの物はネットで注文できるわけだけど。
重い物やかさばる物以外は、なるべく自分で買い物に行くことにしていた。