かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

「多忙なのにサポートしてもらうのも気が引けて…わたし、日本で働いていたときは、ちょっとできる、なんて思ってたのに。
経理部だったんですけど、システムを使いこなして効率よく経費の処理をすることにやりがいを持っていて。
でもここだと、言葉もうまく通じなくて…」

分かるわ、と言ってくれる。
「言葉が自由に使えないと、自分のアイデンティティを失った気持ちになってしまうのよね」

トモミ先生自身、子どもの頃に日本に滞在してコミニュケーションで苦労した経験があるとか。
だからこそ口先だけの慰めではなく、わたしの境遇に親身になってくれるのだ。

世界一忙しい都市、といわれるニューヨーク。
それは日々、肌で感じることで、摩天楼通りを歩く人の歩調までが速いのだ。
言葉も文化も違う国で人に追い越されながら歩いていると、ふと自分がひどくちっぽけに感じてしまう。

仕事をしておらず何者でもない…そんな無力感に飲み込まれそうになる。
トモミ先生のレッスンを受けて、日本語で自分の気持ちを表現することで、わたしはようやく深く息がつけるようになるのだ。