顔を上げると透さんと視線がかち合った。
「———お母様とお祖母様に気苦労をかけたくないんだろう」
「はい」
彼の視線をまっすぐ受け止める。
この願いを聞き届けてくれないような人なら。どんな困難があっても、会社を辞して別の道を進もうと決めていた。
それでもわたしは心のどこかで、透さんの返事に期待していた。たとえば、心配は無用だ、などと請けあってくれることを。
「なら二人で努力しないといけないな」
努力…?
「俺たちは恋愛の末にめでたく結婚することになった、と。演技だと限界があるだろう」
片眉をくいと上げてみせるのは透さんの癖のようだ。
演技じゃないということは、えーと。なぜだろう、よからぬことを口にしてしまった気がする。
「そういうことなら末長くよろしく、辻原さん、いや桜帆さん」
彼は笑んでいるが、わたしの顔は固まったままだった。
「———お母様とお祖母様に気苦労をかけたくないんだろう」
「はい」
彼の視線をまっすぐ受け止める。
この願いを聞き届けてくれないような人なら。どんな困難があっても、会社を辞して別の道を進もうと決めていた。
それでもわたしは心のどこかで、透さんの返事に期待していた。たとえば、心配は無用だ、などと請けあってくれることを。
「なら二人で努力しないといけないな」
努力…?
「俺たちは恋愛の末にめでたく結婚することになった、と。演技だと限界があるだろう」
片眉をくいと上げてみせるのは透さんの癖のようだ。
演技じゃないということは、えーと。なぜだろう、よからぬことを口にしてしまった気がする。
「そういうことなら末長くよろしく、辻原さん、いや桜帆さん」
彼は笑んでいるが、わたしの顔は固まったままだった。


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)