かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

年齢は28歳。
現社長である父親が海外事業部を統括していた関係で、彼も幼少期から海外で暮らしていた時期が長い。
長男である兄の(いたる)氏は日本の大学に進学したが、次男である彼は、アメリカの名門大学の理工学部経営システム工学を修了している。
大学では統計学や生産管理システムなどを専攻。
久我ホールディングスの常務の地位にあり、金融事業本部で、異業種連携によるクロスインダストリー・ビジネスを創出する。AI技術を活用することで、これまでのビジネスプロセスを刷新し、新たなビジネススキームを提案…このあたりでわたしの頭のヒューズは飛んでしまう。

こんなとんでもなくエリートの御曹司と、ただの庶民家庭の娘が結婚なんて、不釣り合いでしかない。

「人間は階級を作りたがる生き物だ。貴族制度が現存している国は多いし、日本にもいわゆる上流階級みたいなものはあるのかもしれない」

その通りですと、わたしはこくこくうなずく。

「そんな身分制度のような考えにも縛られたくない」
あっさり言ってのける。