かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

うーんつまり、と彼は膝に肘をつき、組んだ指の上にあごを乗せる。
「辻原さんは、形だけじゃなくて俺と本当の意味で夫婦になりたい、ということか」

そっちじゃないっ、結婚は好きな人同士が結ばれるものっていう意味で。
いや、分かって言ってるはずだ、この人…
わたしはとんでもない相手に見込まれてしまったんじゃないだろうか。寒気に似た感覚が足元から這い上がってくる。

「キミが言うように、人生の伴侶を決めるのは大事な問題だ」
こちらをひたと見据えて彼が告げる。
「ゆっくり考えてほしい」