かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

はたして———

「わたしの母と祖母には、恋愛結婚だということにして頂けないでしょうか」

三つ指ついて頭を下げ、その言葉を口にした桜帆。
プロポーズに呆然とし、悩み抜いて、そして覚悟をもった一人の女性がそこにいた。
家族、が彼女のなによりも大切なものなのだ。その家族に自分もなれるだろうか?

「大切にします」と桜帆の母と祖母に誓った気持ちに偽りはなかった。
問題は物理的にそれがなかなか叶わないことだったが。

分かっていたことだが、ニューヨークに来てからの忙しさは尋常ではなかった。
今思い返してもよく倒れなかったものだ。いや、倒れずにすんだのは献身的にサポートしてくれた桜帆のおかげだ。
こちらは、慣れない英語での暮らしに戸惑う桜帆をろくに気遣うこともできなかった。

せめてもの罪滅ぼしは、同僚からバイリンガルのいいヨガインストラクターがいると聞いて桜帆に紹介できたことだろうか。
さっそくレッスンを受けるようになった桜帆は、ヨガと英語が学べて、日本語でおしゃべりもできて一石三鳥、と朗らかな表情を見せてくれた。