かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

対面する前からこちらの気持ちは決まっていたのだから、桜帆にとっては降ってわいた災難というかなんというか。

いきなり社長の息子に結婚を申し込まれて、それが冗談ではないと悟ると、桜帆は青くなって固まってしまった。
無理もない。
それでも理性と思考力を保ち、「釣り合いません」と固辞してみせた。

透はできる限り率直に、ありのままに自分の立場や考えを彼女に語った。
耳触りのいい言葉や希望的観測は抜きにして。舌先三寸で丸めこんで結婚に持ちこんだところで、破綻は見えている。
それに、くどいようだが女性を気持ちよくさせる言葉が吐けるタイプではないのだ。

こちらの条件を提示しながら相手の言い分も引き出し、考える時間を与えて、最終的に「Yes」の返事をもらうまで粘る。まるで商談だなと思いながら。

それで断られても恨むまい、と自分に言い聞かせた。
彼女を苦しめたくなかった。心根のまっすぐな女性だ。桜帆には幸せになってほしい。
何度か会って食事をしながら、思いつめた表情をしている桜帆を見てそんな気持ちを抱くようになっていた。

それと同じだけ、彼女を欲しいという想いも強くなる。