かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

「わたし…うまく言えないんだけど、この一年の経験って、日本で普通に会社員をやっていた十年分くらいの重さと濃さがあったと思う。透さんに支えてもらってばかりだったけど。知らないこととか学ぶことばっかりで。外国の文化だけじゃなくて、自分についても意外と発見があったり」

「俺は桜帆にほとんど何にもしてやれなかった。俺のほうが、支えてもらってばかりだった。桜帆がいなければ、仕事とビジネススクールを両立することは到底できなかった」

いやわたしハウスワイフなんだから…そう言いかけるわたしに、強い視線を当ててくる。

「これは…英語で言ったほうがしっくりくる気がするんだよな」
小さく首をひねって。
「I'm so proud of you(きみを本当に誇りに思う)」

努力の成果や大きな成功を賛辞するときに使われるから「よくやったね」というニュアンスが近いと思う。
それでも、proudという言葉がもつ「誇り」という意味は、どうしたって特別な響きがある。
誇り…自分が透さんの誇れる存在。実感はわかないけれど、その言葉はじわじわと胸を温かく満たしてくれる。

「…ありがとう」
指の節で、目尻を押さえた。あふれてくるものがある。

「春になったら旅行に行かないか。だいぶ遅くなってしまったけど、新婚旅行だ。日本に寄るのもいい」

結婚直後に渡米したので、そういえばまだ二人で旅行をしたことがなかった。

「うん…透さんと一緒ならどこでもいいよ」
心からそう答えた。