かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

気温が氷点下まで下がるニューヨークの冬だけど、建物の中はセントラルヒーティングが効いているのでシャツ一枚で過ごせる快適さだ。

透さんのプレゼントのスノーブーツを相棒に、イヤーマフやらニット帽やらも合わせて着こんで、わたしは元気に冬の街を歩いていた。

帰宅した透さんが、「寒いなー」と言いながら手袋を外した手で、わたしの頬を両手ではさんでむにむにしたりと、そんなお茶目な一面も知った。
わたしたちはよく笑うようになった。

トモミ先生の腕は、ゆっくりとそれでも確実に回復していた。

季節は行きつ戻りつしつつ、それでも確実に移り変わってゆく。

三月のある週末、朝食のテーブルで透さんが「一年たったんだな」とつぶやいた。

「そういえばそうだっけ」

「ああ、一年前の三月だ。ニューヨークにやってきた」
もぐもぐとトーストとともに思い出を噛みしめているみたいだ。

「振りかえると、ほんとにあっという間だね」
月並みだけどそれが実感だ。無我夢中のうちに過ぎてしまった。一つ言えるのは、ものすごく濃密な一年だった。

そうだな、と答える透さんの胸にはどのような思いが去来しているんだろう。