かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜

リクエストに応えて、沢山のおにぎりを抱えてアパートを訪れると、トモミ先生がさばさばした表情で迎えてくれた。

「気長に行くわ。昨日はドーラが来てね、香りのいいオイルで腕を一時間もマッサージしてくれたの。
ああ、おにぎり沢山、ありがとう。片手で食べられるし、冷凍できるし、栄養が摂れて、おにぎりって素晴らしい発明品じゃない。ノーマンもサホのおにぎり大好きなのよ。ほっとくと全部食べちゃうの」

いつまでもくよくよしていないところはさすがだ。

「今日は四種類作ってみたの。枝豆と桜えびのおにぎりがおすすめかな」

「まあ、美味しそう」

「今日は天気がいいし風もないから、ちょっと外を歩いてみない?」

「いいわね、今日はまだ外に出てないの。コートを着せてもらえる?」

腕を通さなくてもはおれるケープタイプのコートを新調していたので、それを先生に着せかける。

二人で風情あるグリニッチ・ビレッジの美しい街をゆっくり歩いた。念のためわたしは彼女の右側を歩く。
右腕をぶつけるのが怖いので、まだ人通りの多い場所は歩けないという。