彼の考えはうっすらと分かってきた。
彼、久我透は何にも頼らず自分の力で未来を切り開きたいのだ。
そのために、しがらみのない結婚相手を求めている。
辻原桜帆は、両親ともに久我ホールディングスの元社員で、母親は久我本家の遠縁でもある。
氏素性は確かだが、父親はすでに亡い、いってしまえば無力な一人の女性だ。
「…わたしは、都合のいい相手ということでしょうか」
「その表現は語弊があるな」
彼が片眉をちょいと吊り上げる。外国人を思わせる動かし方だ。
「言うなれば、俺が求める条件を完全に叶えてくれる女性だ。正直、キミ以上の相手は望めない」
その言葉に不覚にも、気持ちがくすぐられるのを感じる。しかし転職スカウトのような台詞だ。
「ですが、常務…」
言いかけるわたしを、人差し指を立てて彼が制した。
「あ、役職呼びはやめよう。社内ルールにもなってる」
彼、久我透は何にも頼らず自分の力で未来を切り開きたいのだ。
そのために、しがらみのない結婚相手を求めている。
辻原桜帆は、両親ともに久我ホールディングスの元社員で、母親は久我本家の遠縁でもある。
氏素性は確かだが、父親はすでに亡い、いってしまえば無力な一人の女性だ。
「…わたしは、都合のいい相手ということでしょうか」
「その表現は語弊があるな」
彼が片眉をちょいと吊り上げる。外国人を思わせる動かし方だ。
「言うなれば、俺が求める条件を完全に叶えてくれる女性だ。正直、キミ以上の相手は望めない」
その言葉に不覚にも、気持ちがくすぐられるのを感じる。しかし転職スカウトのような台詞だ。
「ですが、常務…」
言いかけるわたしを、人差し指を立てて彼が制した。
「あ、役職呼びはやめよう。社内ルールにもなってる」


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)