「はっ、可愛いなぁ友妃は……ちょろすぎて」
すべてが計算、この俺があんなどんくせぇヘマするわけないじゃん? 友妃も完全に騙されてんなぁ、心配になるわ。そういう鈍感さとかちょっと抜けてるところも友妃の良さではあるが、厄介なんだよねえ。男ってそういう女好きじゃん?
「ま、別にいいけど。寄ってくる男は俺が容赦なく蹴散らすし~。さてと、このまま泊まってくか」
って、おい。普通に入ってくんな。脱衣所に平然と入ってくるのは友紀の母親。
「相変わらず策士だね~」
「勝手に入ってくんのやめてくれますー?」
「服着てんじゃん」
「いや、そういう問題じゃなくねえっすか」
友紀の母親は、言わずもがな俺の本性を知っている。
「程々にしておきなよ~? さすがの友紀もドン引きすんでしょ~」
「まぁそろそろ次のフェーズにってところっすかね」
「うわぁ、怖い男」
「ははっ」
あえて髪を拭かず、水が滴るほど濡れた状態で友紀のもとへ向かう。気配を消し、背後をとる。俺が後ろから抱きしめると、ビクッと跳ねる友紀の体。
「ただいまぁ友~妃ちゃん!」
「わぁ!? ちょ、びっくりしたぁ。もぉ髪の毛ちゃんと拭いたぁ!? めっちゃ濡れてるじゃん、風邪引くよ~? 来年高校生になるっていうのに、いいかげんしっかりしなさい!」
まだまだ先は長い、何があっても責任が取れるまでは……とかなんとか理由をつけ御託を並べて、そもそも俺に勇気がありゃこんなことにはなってねぇわな。
「郁雄って誰に似たんだろう?」
「川で拾われたんじゃないの~?」
「ちょ、お母さん。それはさすがに言いすぎ」
「はは~、おばさん酷いなぁ」
なあ、友妃。なんで気づかねぇの、俺の気持ち。こんなにも分かりやすくアピってんのに。ま、鈍感すぎる友妃に察してくれっつーのも無理な話か。そんな友妃もたまらなく好きな俺もかなり重症だよな。
「はあ、めちゃくちゃにしたい」
「ん? なんて?」
「ううん、なんでもない」
「ていうか、いいかげん離れなさい」
「ええ~」
「もお、早くドライヤーしないと風邪引くよ!」
『へへっ、友妃ちゃんに怒られちゃった~』的な感じで、しれっと胸付近に手を持っていっても一切反応しない友紀。ほんっと絶望的な無頓着さ。
「C」
耳元でそう囁くと、振り向いて俺を見上げてくる友紀が死ぬほど愛おしい。
「ん? なに?」
「ん?」
「しーって?」
『友紀ちゃんのおっぱいCカップでしょ~?』なーんて言ったらおそらく拳が飛んでくる。
「ん~? なんでもないよぉ」
「ふーん? ほら、髪乾かしてあげるから離れなさい」
「はぁい」
誰にも渡さない、友紀だけは。



