「ごめんね? 友紀ちゃん。この前炊飯器も壊しちゃったし、何もしないほうがいいかなって……」
友紀はこういう俺にめっぽう弱い。だからそこにつけ込めば── 友妃は簡単に落ちる。
「あ、ああ、うん、ごめんごめん! 危ないから郁雄は何もしなくていいよ? 私が隣に住んでるわけだし、いつでも頼ってくれればいいから。ね? これからも私がちゃんと郁雄の面倒見るし、そんな顔しないでよ」
ほらね、友紀は俺を見捨てられない。
ちなみに俺達は家が隣同士で、俺の両親はとくに仕事が忙しくてほぼ家にいない。金に物を言わせて家政婦を雇うだの何だの言い始めた時は全力で拒否った、友紀に面倒を見てもらうために。そんな友紀の両親も仕事で忙しそうにしている=俺達はどちらかの家で2人きりで過ごすことが普通な状態というわけ。ま、さすがに毎日っつーわけにもいかねぇけど。
「僕、友紀ちゃんのお嫁さんになろうかなぁ」
「なに言ってるのよ」
「だって友紀ちゃん本当に頼りになるんだも~ん」
「まぁこれだけ郁雄の面倒を見てこれば必然的に世話焼きになっちゃうよね」
「ははっ! 僕、友妃ちゃんがいないと生きていけな~い……なぁんてね」
「はあ、もう。ほんっと郁雄は危なっかしくてほっとけないからなぁ。私一生彼氏できないんじゃない? 郁雄の世話で」
友妃が彼氏……ねえ。悪いけどそんなもん一生作らせねぇよ? 俺を彼氏にするか、俺の世話役を続けるか、それ以外の選択肢を友紀に与えるつもりはない。
「友紀ちゃんってさ、本当に彼氏欲しいの?」
「え?」
俺を見つめている友紀の瞳が少し揺れている。その理由はきっと、俺にしか分かんねえだろうな。友紀は俺が知っているという事実にまだ、気づいていないだろ──。
「まあ、それもそうだよね。友妃ちゃん可愛いし美人さんだし、彼氏のひとりやふたり欲しいよね」
「ひとりやふたりて……」
「ねえ、友紀ちゃん……彼氏ができたらさ、僕っていらない? 必要なくなっちゃうのかな……友紀ちゃんの一番じゃなくなっちゃう? だったら友紀ちゃんに彼氏なんてできなければいいんだ。だってずっと僕の傍にいてほしいだもん」
可哀想な子を全力で演じながら友妃を見つめる。これで友紀はNOとは言えない……というか、言わせない。
さあ、落ちろよ。
「あぁもう! そんな寂しそうな顔しないでよ! そんなに心配しなくても彼氏なんて……私にはできないし!」
俺だったら友紀のすべてを包み込んでやれるのに──。
「やったぁ! ならずっと一緒にいようね? 友妃ちゃん」
「はいはい。家隣同士だし、幼なじみだしね」
「うん!」
この猫かぶりも何年目だ? まあ、こっちのほうが何かと都合がいいんだよねえ。
なんでこんな猫かぶりをするようになったか、これには明確な理由がある。あれは忘れもしない5歳になったばかりの頃、友妃が突然「好きな子がいるんだぁ」と満面の笑みを浮かべながら俺にそう言ってきた。あまりの衝撃になんの反応もできずにいると「あの子どんくさいからほっとけないの」って──。
友妃は昔から面倒見が良いタイプで、なんつーの? お姉ちゃん気質的な? だからかな、なんでそんな奴? って男を好きになりやがった。だから俺は決めた、クソほどダメダメな男を友妃が手に入るまでは完璧に演じきるって。仮に手に入らなかったとしても、死ぬまでダメダメな男を演じきってみせるって覚悟をした。
今のところ全く気づかれねぇし、もはやバレる気配すらねえ。友妃ってしっかりしてるわりにちょっと抜けてる部分あるっつーか、鈍感なんだよなぁ。そういうところもクソ可愛いんだけど。
「カレー以外に食べたいものある?」
『友妃を食べたい』なーんて言えるわけねえ。
「う~ん、迷っちゃうなぁ」
「でたでた、優柔不断~」
少し呆れたように笑う友妃が本当に綺麗で、その瞳に俺以外映してほしくねえって本気で思う。
「だって友妃ちゃんの料理、全っ部美味しいんだもん! なんでも食べたい!」
「ははっ、なにそれ~。でもありがとーう」
容姿端麗、家事全般できる、学力もそこそこ、運動神経抜群、人当たりも良い。こんな友妃が生まれてこの方彼氏なしの理由が分かるか? そりゃ友紀自身が避けてるってのもあるけど、俺が野郎共を排除してきたからに決まってんでしょ。モテてる友妃の貞操をここまで守り抜いてきた俺を褒めてほしいわ、マジで。
んで、当然ながら俺も生まれてこの方彼女なしなわけなんだけど、そりゃさ? ぶっちゃけモテるよ? まあ、かなりね? 隠しきれないんだよねぇ容姿ってもんはさ。でもマァジで友妃以外に興味ねぇし、心底どうでもいい。
ま、俺は別に友妃と付き合えなくてもいい。友妃とこの先も一緒にいられるのならこの際もうなんだっていい。
「今日買い物行かなきゃだね~? 荷物持ちするよ~僕」
「意外と力持ちだもんね」
「意外とは余計だよ~?」
「ははっ、ごめんごめん」
友紀は自分がモテてるって自覚はない。それが好都合で非常にありがたい。友妃を他の男にやるわけにはいかねぇんだわ。つーか、友妃がこの世で一番いい女なんだって、そんなんもんは俺だけが知ってりゃそれでいいだろ。
友紀はこういう俺にめっぽう弱い。だからそこにつけ込めば── 友妃は簡単に落ちる。
「あ、ああ、うん、ごめんごめん! 危ないから郁雄は何もしなくていいよ? 私が隣に住んでるわけだし、いつでも頼ってくれればいいから。ね? これからも私がちゃんと郁雄の面倒見るし、そんな顔しないでよ」
ほらね、友紀は俺を見捨てられない。
ちなみに俺達は家が隣同士で、俺の両親はとくに仕事が忙しくてほぼ家にいない。金に物を言わせて家政婦を雇うだの何だの言い始めた時は全力で拒否った、友紀に面倒を見てもらうために。そんな友紀の両親も仕事で忙しそうにしている=俺達はどちらかの家で2人きりで過ごすことが普通な状態というわけ。ま、さすがに毎日っつーわけにもいかねぇけど。
「僕、友紀ちゃんのお嫁さんになろうかなぁ」
「なに言ってるのよ」
「だって友紀ちゃん本当に頼りになるんだも~ん」
「まぁこれだけ郁雄の面倒を見てこれば必然的に世話焼きになっちゃうよね」
「ははっ! 僕、友妃ちゃんがいないと生きていけな~い……なぁんてね」
「はあ、もう。ほんっと郁雄は危なっかしくてほっとけないからなぁ。私一生彼氏できないんじゃない? 郁雄の世話で」
友妃が彼氏……ねえ。悪いけどそんなもん一生作らせねぇよ? 俺を彼氏にするか、俺の世話役を続けるか、それ以外の選択肢を友紀に与えるつもりはない。
「友紀ちゃんってさ、本当に彼氏欲しいの?」
「え?」
俺を見つめている友紀の瞳が少し揺れている。その理由はきっと、俺にしか分かんねえだろうな。友紀は俺が知っているという事実にまだ、気づいていないだろ──。
「まあ、それもそうだよね。友妃ちゃん可愛いし美人さんだし、彼氏のひとりやふたり欲しいよね」
「ひとりやふたりて……」
「ねえ、友紀ちゃん……彼氏ができたらさ、僕っていらない? 必要なくなっちゃうのかな……友紀ちゃんの一番じゃなくなっちゃう? だったら友紀ちゃんに彼氏なんてできなければいいんだ。だってずっと僕の傍にいてほしいだもん」
可哀想な子を全力で演じながら友妃を見つめる。これで友紀はNOとは言えない……というか、言わせない。
さあ、落ちろよ。
「あぁもう! そんな寂しそうな顔しないでよ! そんなに心配しなくても彼氏なんて……私にはできないし!」
俺だったら友紀のすべてを包み込んでやれるのに──。
「やったぁ! ならずっと一緒にいようね? 友妃ちゃん」
「はいはい。家隣同士だし、幼なじみだしね」
「うん!」
この猫かぶりも何年目だ? まあ、こっちのほうが何かと都合がいいんだよねえ。
なんでこんな猫かぶりをするようになったか、これには明確な理由がある。あれは忘れもしない5歳になったばかりの頃、友妃が突然「好きな子がいるんだぁ」と満面の笑みを浮かべながら俺にそう言ってきた。あまりの衝撃になんの反応もできずにいると「あの子どんくさいからほっとけないの」って──。
友妃は昔から面倒見が良いタイプで、なんつーの? お姉ちゃん気質的な? だからかな、なんでそんな奴? って男を好きになりやがった。だから俺は決めた、クソほどダメダメな男を友妃が手に入るまでは完璧に演じきるって。仮に手に入らなかったとしても、死ぬまでダメダメな男を演じきってみせるって覚悟をした。
今のところ全く気づかれねぇし、もはやバレる気配すらねえ。友妃ってしっかりしてるわりにちょっと抜けてる部分あるっつーか、鈍感なんだよなぁ。そういうところもクソ可愛いんだけど。
「カレー以外に食べたいものある?」
『友妃を食べたい』なーんて言えるわけねえ。
「う~ん、迷っちゃうなぁ」
「でたでた、優柔不断~」
少し呆れたように笑う友妃が本当に綺麗で、その瞳に俺以外映してほしくねえって本気で思う。
「だって友妃ちゃんの料理、全っ部美味しいんだもん! なんでも食べたい!」
「ははっ、なにそれ~。でもありがとーう」
容姿端麗、家事全般できる、学力もそこそこ、運動神経抜群、人当たりも良い。こんな友妃が生まれてこの方彼氏なしの理由が分かるか? そりゃ友紀自身が避けてるってのもあるけど、俺が野郎共を排除してきたからに決まってんでしょ。モテてる友妃の貞操をここまで守り抜いてきた俺を褒めてほしいわ、マジで。
んで、当然ながら俺も生まれてこの方彼女なしなわけなんだけど、そりゃさ? ぶっちゃけモテるよ? まあ、かなりね? 隠しきれないんだよねぇ容姿ってもんはさ。でもマァジで友妃以外に興味ねぇし、心底どうでもいい。
ま、俺は別に友妃と付き合えなくてもいい。友妃とこの先も一緒にいられるのならこの際もうなんだっていい。
「今日買い物行かなきゃだね~? 荷物持ちするよ~僕」
「意外と力持ちだもんね」
「意外とは余計だよ~?」
「ははっ、ごめんごめん」
友紀は自分がモテてるって自覚はない。それが好都合で非常にありがたい。友妃を他の男にやるわけにはいかねぇんだわ。つーか、友妃がこの世で一番いい女なんだって、そんなんもんは俺だけが知ってりゃそれでいいだろ。



