「んっ、郁雄待って」
「ん? まだへばんなよ」
「はぁっ、もう無理!」
「なに、もうイくの?」
学校終わりに平田家へ来て、友妃のガッチガチに凝った肩を揉みつつ耳元でそう囁くと、ペシンッと顔面に友妃の手が飛んできた。
「……っ! 紛らわしい言い方をするでない!」
「いてて」
ま、その飛んできた友紀の手を逃がすわけもなく掴んで、手の甲にそっと口づけをするとピクッと控えめに友妃の体が反応して、それがどうしようもなく愛おしすぎてペロリと舐めると鼻をへし折られそうになった。
「調子に乗らない!」
「いててっ! ちょ、酷くねぇ? 肩揉みしてた健気な幼なじみにむかって~」
「肩揉みしてくれるのは本当に感謝してるけど、それとこれとは話が別です!」
「へえー」
「もう!」
ソファーに座ってる俺の間にちょこんと座ってる友妃ってさ、ほーんと警戒心皆無だよなぁ。ま、そんな友妃も可愛いんだけど。つーか、ムッとしながらそんな上目遣いで見つめてくんのやめてくんない? 食べたくなるだろ。
「……あの、心の声うるさい」
「ははっ、可愛すぎ」
「ちょ!?」
友妃の頬を掴んでそのままパクッと唇を食べると、カチコチに体が固まって緊張してんのが伝わってくる。それが可愛くて可愛くてたまんねえ。何度も何度も友妃の唇に軽く触れて、時々上唇を食らったり。
「もう、郁雄……!」
自分で言い出した手前、全力で拒否れないあたりも友妃らしいよな。俺のものとして俺を受け入れる努力してるっつーか。ま、友妃がそういう女だって知ってて、そこにつけ込んだのは俺か。無理やり事を進めたいわけではねぇけど、もう止まんねぇんだよな。受け入れてくれよ、愛してるから──。
「友妃、愛してる」
「もうだめ」
「無理、足んない」
この後、友妃がふにゃふにゃになるまで愛でた。
「腹へらね? なんか食う?」
「あの、すっごく疑問なんだけど」
「ん~? なにがぁ?」
「なんでろくに料理もしてこなかった郁雄が私より料理上手なのよ。ちょっと気に入らない」
そんな拗ねたような顔してこっち見んなよ。可愛すぎ、どんだけ可愛いんだよ、マジ天使か。
「まあ、見よう見まねってやつ? 友妃が料理してんの間近で見てきたし? いつか友紀に手料理振る舞えるようにってミーチューブで適当に動画観たり?」
「……郁雄ってさ、昔から頼りないくせに私のためにって行動してくれてたよね」
そんなこと言いながらエプロンをつける友妃は、俺のために料理するってのがクセづいてんだなって、ちょっと微笑ましくなる。
「そりゃそうだろ、好きなんだし」
「そんな真っ直ぐな目して伝えてこないでよ、恥ずかしいなぁもう……っ!?」
耳まで真っ赤にしてる友妃が死ぬほど愛おしすぎて、後ろから抱きしめて耳を甘噛みすると可愛らしい声を漏らす友妃。
こんなの、歯止めが利かなくなるだろ。
「い、郁雄!」
「おーい、人ん家でイチャイチャしてんなよ~」
「お兄ちゃん!?」
「げ、なんでいんの?」
「いやここ俺ん家な!?」
「ちょ、郁雄離れて」
「やだ」
「やめなさい!」
ダメでしょ! 危ないよ! やめなさい! ガキの頃から友妃に散々言われてきた言葉。普通だったらこんな言葉嫌なんだろうけど、俺にとってはこの言葉は心地いい。昔も今も、変わらず。
「ったく、俺ん家でたっぷりシような?」
「誤解を招くような言い方をするな!」



