宇野和やクラスの連中が友妃のフォローをしてくれているだろうから、ギリなんとかなるか? まあ本来、その役回りは俺だったはずなんだけど。今すぐにでも友紀のもとへ行きたいが、そういうわけにもいかねえ。

 しっかしギャラリーが鬱陶しいな。まあ追い払う時間も無駄でしかねぇし、とりあえず後で口止めすりゃいいかめんどくせえ。

「こんにちは~会長さん」
「な、なんだ、君は……ああ、金魚の糞じゃないか、あの女の」
「あぁごめん、悪いけど僕はそんな無駄話をするつもないよ。これじゃない? 生徒会の書類とやらは」

 校庭のベンチに置かれてたあの書類、あれだろうなって思って戻ってみりゃ案の定ビンゴ。どーせこのクズ会長が置いて忘れたんだろ。

「はっ!? なっ、なぜ君がそれを!?」
「はあ、校庭のベンチに置いてありましたけどー。会長さんが置き忘れたんじゃない?」
「いや、いやいや、そんなはずは……」

 否定なんてできねぇだろ? そりゃ動揺もするわなぁ。てめぇのミスなんだし。こっちは目撃情報もあんだけど?

「会長さんさぁ、認めたらー? 見苦しいよ」
「な、何をだ!? 何を馬鹿なっ」
「自分があのベンチに置き忘れたって認めたら? って僕は言ってるんだけど、分かんないかな。何べんも同じこと言わせないでくれる? 疲れるんだよねえ、こういうクソほど無駄な時間」
「なんだと!?」
「あのさ、目撃情報もあんの。友妃ちゃんがちゃーんと渡してたところも、それを呑気に忘れてった会長さんの姿も、そりゃそりゃバッチリと見たってさ。あ、ちなみにそれ見てたの複数人だからねー? もう言い逃れとかキツいっしょー。てなわけで、覚悟はできてる?」
「覚悟をするのはお前のほうだ!」

 あー、めんっどくせぇ。阿呆の相手は疲れるよほんっと。

「誰のものを泣かせたか、その身をもって知るといいよ」
「な、なにを……」
「言っとくけど僕、容赦しないから」
「あぁん!? 俺を誰だとっ」
「お前こそ俺を誰だと思ってんの?」
「っ! 知るか!」

 ビビり散らかしてるくせに威勢だけはいい、中途半端な権力者ほど醜いもんはねえな。権力は権力で制す、後悔しても遅ぇってこった。

「可哀想な奴」
「ハハッ、ハハハ! それがお前の正体か!?」

 ま、どうでもいい、知られたとて~だしな。どうとでもできる。

「自分より学力も家柄も劣ってる友妃が仕事はできるわ周りから頼りにされてるわ、男女問わず好かれてるわ……そんなに気に入らねぇか? はっ、醜い嫉妬だねえ、哀れすぎて泣けるわー。でもまあ、情けなんてかけてやるつもりはねぇけど。ああ、ちなみになんだけどこっちの俺、友妃はまだ知らんねぇんだわ。この意味が分かるか? 会長さんを含めここにいる野次馬共に言っとくけど、こっちの俺のこと友妃にバラした奴、本気で人生終わったと思っとけよ。何事もタイミングっつーもんがあるんでね。んじゃ、さいなら」

 俺の実力で得たもんじゃない権力なんざこういう時に使いたくもなかったが、友妃が絡んでるとなれば話は別だ。だいたい父さんも母さんも『権力は使うためにある。思う存分使いなさい』ってタイプだしな。



 って、なんでいねぇんだよ。教室へ戻ったものの友紀の姿が見当たらない……宇野和と安曇の姿も。

「友妃ちゃんは?」
「早退するって帰っちゃった」
「悪い! 引き止めようにも気が引けてよ、宇野和と安曇が一緒に帰ったぜ」

 まあ、そうなるわな。別にこいつらせいってわけでもねぇし当たるのも違ぇか。

「そっか、分かった。僕も早退するって先生に伝えといてくれる?」
「お、おう!」
「平田さんのことよろしくね!」
「うん、ありがとう」

 さて、どうすっかな。さすがの友妃も気が滅入ってるだろう。こういう時に傍にいてやれねぇ関係性でもない、どんな時だって俺と友紀はいつも一緒だった。

「けど今はどうだ……」

 今まで俺と友紀の2人だった、なのに今は宇野和と安曇がプラスされてんのか。なんか釈然としねぇな。

「でもまぁ、友紀には必要なのかもな」

 仲のいい同性の友達ってやつが。