雨宿り喫茶で初恋を

ふいに木製の扉が開いてドアベルの音が鳴り響く。

無意識に振り返った私は、息を呑んだ。

見慣れないスーツ姿だが、見間違える訳がない。

驚いたのは相手も同じだったのだろう。覚えがある、二重の目をまんまるにしている。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

雨宮さんの澄んだ声が響く。


「えっと……コーヒーをブラックでお願いします」

「承知致しました」

さっと注文を終えた彼はハンカチで雨粒を拭いながら、ゆっくりと私の方へと向かってくる。

「……あの……」

「は、はい……」

返事をしたものの、私は言葉が続かない。

「えっとー……早紀、だよね」

「うん。そう、だよ……」

三年ぶりの再会に互いにぎこちなくなってしまう。

「……久し、ぶり」

「うん、久しぶり、だね」

おうむ返しをすれば、俊輔と一瞬、目があって顔が紅潮するのがわかる。

(どうしよう……)

その時──マメが急に起き上がると、うんと伸びをする。

そして、まるで俊輔に席を譲るように雨宮さんの元へと戻っていく。

俊輔が私の向かいの席を指差した。

「ここ、いい?」

「うん。もちろん」

外はまだ雨が降っていて、雨音が静かに聞こえてくる。

この雨が止むまで彼と一緒にコーヒーを飲み、積もる話がしたい。

過去のこと。
今までのこと。

そして二人のこれからのこと。

全てをありのままの言葉で伝えたい。


三年前──雨宿りをした、あの日の約束が果たせるように。