「……あの……そう、ですけど」
顔に不信感が出てしまっていただろうか。
男性はすぐに眉を下げた。
「すみません、突然話しかけて驚きましたよね。僕、雨宮といいます。そこで喫茶店やってる者です」
「え……、こんな時間に喫茶店?」
「はい、今日は雨宿りの方のために開けてるんです」
(雨宿りの方のために?)
もう少し詳しく聞こうかとも思ったが初対面の為、私は相槌だけ打った。
「あそこなんですけどね」
雨宮と名乗る男性が手のひらで指し示しているのは、商店街の角だ。少し離れているが、確かに昔ながらの喫茶店が見える。
(あれ……さっきここに来たときは気づかなかったな……)
「何も頼まなくても結構ですから。雨宿りして行かれませんか?」
「え……っ、いやそんな訳には……それに一時間ほどで止むはずなので」
私は顔の前でぶんぶんと手を振り、すぐに断った。
「そうですか、一時間で止みそうもないですが……」
(……そんなはず……)
雨宮さんの言葉に私が再びスマホで雨雲レーダーを見れば、雨が上がるのは二時間後になっている。
「嘘……二時間……」
「雨があがるの伸びてましたか?」
「はい……」
私の微妙な顔を見ながら、雨宮さんは柔らかく笑った。
「では、雨が止むまでということで」
私は雨宮さんのどこか安心する不思議な微笑みに小さく頷くと、喫茶店へと向かった。



