私は残業を終えると、勤めている出版社をあとにする。そして駅へと真っ直ぐに向かって歩いていく。
(上京して、もう三年か)
なんとなく見上げた空はさっきまで星が見えていたのに雨が降りそうな気配だ。
(雨……嫌いなんだよね)
それは元彼との別れ話を思い出すから。
あの日も待ち合わせてすぐに雨が降ってきて、私たちは誰も居ないバス停で雨宿りしながら、別れ話をした。
(俊輔、元気にしてるかな)
私は当時、交際していた同い年の俊輔と別れてこの東京にやってきた。
俊輔と私はお互いに一目惚れで高校の時から大学卒業まで七年もの間、付き合った。自慢ではないが大恋愛だった。
でも付き合って欲しいと言ったのも私だったが、別れを切り出したのも私だった。
私にとって──俊輔は初恋。
恋愛といえば俊輔以外の思い出は何ひとつない。
これからも、もしかしたらうんと歳を重ねてもずっとそうなのかもしれない。
心から大好きだった人だった。
でもあの日、雨の音を聴きながら、私は自分から俊輔の手を離した。



