「通りで、彼女の所作に気品があると思った」

「……ん?」

「?、普通の学生じゃない行動、お前たちよく取るだろ。育ちが良いというか、なんというか」

「マジで?」

「自覚無いの?」

「……」

思わず、誉は口を覆った。
言われて考えれば、誉が元々通っていたのは、この国の上位1%くらいの子供が通う学校だった。

つまり、話す内容はいつも“御家自慢”ばかり。
その1%の中でも、上位に君臨する家。
それが、誉の生家である。

我々が存在していることで、神々が国に恩恵を齎しているとか何とか……まぁ、確かに、普通に神を名乗る奴と友人だったり、絶対に普通の人間ではない能力とかを有しているけど、誉はそういう気取ったお金持ち生活は合わないらしい父親の方針で育てられた為、かなり自由な育ち方をしていた。

それでも、出るものは出るらしい。

(確かに、将来、家を継ぐ立場として必要なマナーは全部、家庭教師に学んできたけど……)

そんな堅苦しい学校が嫌だと愚痴っていたら、同じくそれなりに自由に過ごしてきた妹は、生家のさらに上の存在である当主が堅苦しいのが苦手という理由を隠しつつ、暇潰しで買い取って、自由に校風を変えた、何故か裏で経営難に陥っていた全寮制の学園に入学した。

それをズルい!と、最初は誉も思った。
それくらい、元の学校は息苦しかったのだ。

それから、経緯は様々とはいえ入学してきたこの全寮制の学校。
深く考えていなかったが、確かにここもまた、世間からしたら、良い学校、格式高い学校とされる名門のひとつのため、失念していた。

(……普通の高校生って、何だ?)

それこそ、一般的な学校が分からず、誉が黙り込んでいると、

「……そこまで、考え込むか?」

と、凛空が聞いてきた。

「普通の高校生って、なんだろうかと」

「?、よく分からないけど。別に、今も普通の高校生だろ。全寮制だから寄り道とか存在しないだけで、一応、名門とされているけど、結局は私立だから、という一面が強いだけだし」

凛空は何でもないように話しながら、

「学校の偏差値自体はそう高くない。1部の特定の生徒が、ずば抜けた偏差値なだけ」

「……」

と、冷めた目で告げた。
そのずば抜けた偏差値を、もっているのに。