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「……おい、説明しろ。誉」

「え?何を?」

目の前で、お弁当を美味しそうに食べるこの男。

「なんで彼女がここに居る」

小声で尋ねると、誉は目を丸くして。

「何でって誘ったからだよ。俺と二人きりよりいいだろ」

「……」

もう、何も言えない。

「誉。天宮くんに迷惑かけないの」

「そうだよ」

「杜希、亜希まで……」

「天宮くん、迷惑なら言うんだよ」

「祇綺(シキ)さん!?」

……幼なじみ達からは信用がないのか、口々に言われる誉。

「なんで俺がここにいるのか、本当にわかんないんだけど」

そう誉に言うと、

「俺がいて欲しいからー」

と、にこやかに返された。

「一緒にご飯、嫌だった?」

……ああ、もう。あんま関わりたくないのに。
傷付くのも、面倒事もごめんなのに、誉が転入してきてから、何もかもがおかしい。

上手くいかないというか、ペースに呑まれている。

フェンスに背中を預けると、近付いてきた彼女。

「いや、なんで俺、ここにいるのかなーって」

「誉が無理言った?」

「引きずられてきた」

「そっか。杜希と亜希は厳しいから、仲間が欲しかったのかな。私や祇綺は分かってあげられない悩みもあるから」

「?」

凛空は話を聞きながら、違和感を覚えた。
なんだろう。今の彼女の言葉の─……。

「─あ、そっか。亜希、女の子の格好してるもんね。亜希はね、男の子だよ」

彼女はそんな凛空の様子に気づいて、教えてくれた。けど。

「……はい?」

─ちょっと意味が理解できなかった。
勿論、そんなのは個人の自由だが、長髪に女子と同じようにスカートの制服を着ていて、その顔は男達の間で美人と噂され、昼夜、狙われていたりする。そんな彼女が、彼。

「それとね、別に杜希と亜希は双子でも、兄弟でもないの。間違われやすいけど、本当にただの幼なじみなんだよ」

「幼なじみ」

「そう。亜希は母親に似てるから……」

誉に聞いた話だが、彼らは本当に文字通り生まれた時から一緒にいるという。

だからだろう。彼女が彼らに詳しいのも。
そんなの、全然嫉妬するようなものじゃない。

そもそも、彼女は俺のものじゃない。