✿*:


「ねぇ、勉強教えて〜」

─嗚呼、とても鬱陶しい。

「幼なじみに教えてもらえよ」

「えー、だって、お前1位じゃん。頭良いでしょ」

最近、部屋を訪れる女はいなくなった。
恐らくだが、こいつが裏で手を回してる。

「教えて教えて教えてー」

「……」

騒音の塊。─どうして、こんな奴と同室に。

「あ、勿論、無償じゃないからね」

「お金は必要無いし、お前に教えるメリットもないだろ」

「あるよ。ほら」

そう言いながら、奴は1冊の本を見せてきた。

「……」

無視しようとしたら、

「可愛い可愛いアルバムだよ。これ。俺の宝物」

そう言いながら、それを開いて見せてくる。

「……」

「可愛いだろ、葵咲」

この間から、牽制のつもりか。
数日前に言われた言葉を思い出して、腹が立つ。

「可愛いんだよ、昔から」

「そう」

「可愛いだろ。ほらほら」

「……」

本当に鬱陶しい。

「頼むよ」

「彼女に教えてもらえば良いだろ」

「やだよ。恥ずかしいじゃん」

「はあ?」

意味がわからん。

「向こうは2位とはいえ、教科書丸暗記の俺とは違ってちゃんと勉強してる」

「知ってるよ。昔からだし。でも、嫌」

「……」

話がここまで通じないのは、初めてだ。

「昼休みにさー、ご飯も奢るしー」

「食べないからいらない」

「えっ、ちゃんと食べなよ」

「関係ないだろ」

本当に何なんだ。
最近、取り巻きも遠くから見るだけで、何も話しかけてこなくなった。

昼休みはこの男がストーカー並についてくるから、今まで関わっていた女達も寄ってこない。

本当にこの男は何者で、一体、何を。