君の未来に、ぼくがいたこと。

夜。陽翔の部屋の机に、パソコンの光だけがぼんやりと灯っていた。

モニターには、陽翔の書いた脚本の最終稿と、構想中の映像の絵コンテ、音楽メモ。
すべてのデータが、USBに丁寧に保存されていく。

カチッ。
最後のファイルを保存し終えた陽翔は、USBを握りしめた。

「……もしものことがあっても、これさえあれば……」

陽翔は自分に言い聞かせるように呟いた。
けれど、その目は少しだけ、揺れていた。



翌日。放課後の校庭裏。
陽翔は凛空を呼び出した。

「これ……渡しておきたいものがあるんだ。」

そう言って、ポケットから銀色のUSBを差し出す。
「脚本と映像の原案、全部入ってる。」

凛空は一瞬驚いた表情を見せた。
「なんで……俺に?」

陽翔は笑った。でもその笑顔には、少しだけ影が落ちていた。

「凛空なら、最後までやり遂げてくれるって思ってるから。……もし、俺が途中で倒れて、参加できなくなったら……頼む。」

「――そんなこと言うなよ。」

凛空の声がかすかに震える。

「でも、俺は今、できるだけのことをしておきたいんだ。無責任かもしれないけど、夢だけは、ちゃんと最後まで生きてほしい。」

陽翔は、力を込めて続けた。

「だから、お願い。俺が途中で消えても、この映画だけは残して。」

凛空は拳を握りしめながら、そっとUSBを受け取った。
「……わかった。絶対、完成させる。お前の想いごと、絶対に。」

そのやりとりを、遠くから見つめていた結月。
二人の表情を見て、胸がきゅっと痛くなる。

(……陽翔、何を抱えてるの? 私にも言ってよ……)

けれど陽翔は、まだその“本当”を結月には話そうとしなかった。

自分が消えたあとに結月が泣く未来だけは――
絶対に避けたかったから。



陽翔は空を見上げ、小さく息を吐いた。

(未来は誰にもわからない。だから、信じられる人に託すしかないんだ。)

風がふわりと吹いて、陽翔の髪を揺らした。
その表情は静かで、どこまでも優しかった。