君の未来に、ぼくがいたこと。

放課後の図書室。
夕焼け色に染まる窓際で、結月は陽翔の脚本を静かに読んでいた。

ページをめくるたび、胸がぎゅっと締めつけられる。

「“限られた時間の中で、何を残せるか。それを知るたびに、生きることが怖くなった。でも、君と出会って、それが夢に変わった。”……」

結月の目から、ふいに涙が一粒こぼれる。

(これ……陽翔の本音……?)

その文章には、彼が誰にも見せなかった“生きる痛み”と、それでも前に進もうとする“希望”が、繊細に刻まれていた。



数日後。
空き教室でのリハーサル。

「じゃあ、もう一回頭からいこう!」
凛空の声に合わせて、結月は台本を握りしめ、何度も同じシーンを演じる。

「違う……もう一度やらせて!」
結月の声が少し震える。
陽翔の脚本に込められた想いが強すぎて、胸がうまく押さえられなかった。

凛空がそっと声をかける。
「無理しなくていいよ、結月。伝えたい気持ちは、もう十分出てる。」

「ううん……私、ちゃんと陽翔の“想い”に応えたいの。あの子、ずっとひとりで頑張ってきたから……」

その言葉に、凛空は小さく頷いた。



リハーサルのあと、夕暮れの廊下で、結月は陽翔に話しかけた。

「ねえ、あの脚本のラスト……あれって、本当の陽翔の気持ち、なんだよね?」

陽翔は驚いたように目を瞬かせたあと、照れくさそうに笑った。

「……バレちゃった? そうだよ。でも、演出は少しだけ“願望”も混ぜてる。」

「願望……?」

「うん。“ほんとは、もっと一緒にいたい”っていう願い。でも、未来はわからないから。せめて、映画の中だけでも叶えたくて。」

結月は、その言葉を聞きながら、喉元までこみ上げた言葉を飲み込んだ。

――「好き」って言いたい。
でも、それを言ったら、陽翔が“今を頑張る理由”を壊してしまいそうで――

だから、ただ、そっと笑って言った。

「……映画、絶対に成功させようね。」

陽翔も笑った。

「うん。皆の夢のために、頑張る。」

陽翔のその笑顔はまぶしくて、どこか遠くて――
結月の胸は、またひとつ強くなったようで、少しだけ切なくなった。