君の未来に、ぼくがいたこと。

「合宿――どうかな?」
陽翔のその一言に、教室にいた結月と凛空が顔を見合わせた。

「えっ、合宿って、泊まりで?」凛空が驚いたように言う。
「うん。海の近くに親戚の空き家があるんだ。機材も持って行けば、撮影に集中できるし…気分転換にもなると思って。」
陽翔が少し照れたように笑う。

結月は不安げに言葉を選んだ。
「陽翔、体は……大丈夫なの?」

「もちろん。無理はしないって、約束したでしょ?」
陽翔の声は明るくて、どこか無理をしているようにも聞こえた。



週末。三人は海辺の小さな古民家に到着した。

「わ、海だーっ!」結月が砂浜を駆けていく。
凛空はカメラを構えながら笑う。
「絵になるな〜、主演女優!」

陽翔はその様子を少し離れた場所から眺め、静かに胸を押さえた。
(大丈夫、大丈夫。まだ、動ける。今だけでも、この時間が宝物になるように――)



夕方、撮影を終えた三人は海辺の岩に座り、暮れていく空を眺めていた。
潮風が心地よくて、どこか懐かしい匂いがした。

「陽翔、顔色……やっぱり良くないよ。」
結月が心配そうに声をかけた。

「そっか。ばれちゃったか……」
陽翔は力ない笑みを浮かべる。

「でもね、こんな時間があるだけで、すごく幸せなんだ。病気のこと、忘れられるくらいに。」

「……そんなこと、言わないでよ」
結月はそっと陽翔の手を握る。
「全部、思い出にしたくない。まだ、これからじゃない。」

凛空も横で頷いた。
「陽翔、俺たちずっと一緒にいるからな。夢も、生きることも、全部諦めないで。」



夜。三人は砂浜に寝転び、星の瞬く夜空を見上げていた。

「……ねえ、もし来年もこうしてここに来られたら、何してると思う?」
陽翔がぽつりと呟いた。

「私たちの映画、映画祭で上映されて、大拍手もらってる!」
結月が言い、凛空が笑って続ける。
「そして3人でインタビュー受けて、陽翔は“監督として一言”って聞かれて……照れ笑いする。」

「……いいな、それ。」
陽翔はそっと目を閉じた。

(未来があるって、素敵だな――)

波の音が静かに寄せては返し、三人の時間を優しく包み込んでいた。